
大切な愛犬の肉球が剥がれているのを発見したとき、多くの飼い主さんは不安を感じることでしょう。
肉球は犬の体重を支え、クッションの役割を果たす大切な部分。けれども意外と傷つきやすく、日常生活の中で剥がれてしまうことが少なくありません。
本記事では、獣医師の監修のもと、犬の肉球が剥がれる原因から、家庭でできる応急処置、動物病院での治療法、そして予防策まで、愛犬を守るために必要な情報をわかりやすく解説していきます。
犬の肉球が剥がれるのは危険?知っておきたい基礎知識
肉球は、犬の歩行を支える重要な役割を担っています。
クッションのような構造になっており、歩行時の衝撃を吸収したり、体温調節を助けたりする機能があります。
そのため、肉球が剥がれることは単なる怪我以上に注意が必要です。
肉球が剥がれると、歩行時の痛みはもちろん、細菌感染のリスクも高まります。
また、肉球は一度傷つくと完全な回復までに時間がかかることも多いため、予防と早めの対処が重要になってきます。
犬の肉球が剥がれる主な原因とは?
肉球が剥がれる原因は、外的要因と内的要因の大きく2つに分けられます。それぞれの原因を理解することで、効果的な予防が可能になります。
1. 地面の熱や寒さによる影響
夏場のアスファルトは、気温が30度の時でも表面温度が50度以上になることがあります。
このような高温面を歩くことで、肉球が火傷を負い、剥がれてしまうことがあります。特に、アスファルトやコンクリートは蓄熱しやすく、犬の肉球にとって大きな負担となります。
一方、冬場は寒さや道路の凍結により、肉球が乾燥してひび割れやすくなります。特に除雪剤が撒かれた道路は、化学物質により肉球が荒れやすい状態になります。
2. 長時間の散歩や運動による摩耗
急に運動量を増やしたり、長時間の散歩を行ったりすることで、肉球に過度な負担がかかり摩耗することがあります。
特に、アスファルトやコンクリートなどの固い地面での運動は、肉球への負担が大きくなります。
普段は室内で過ごすことが多い犬の場合、肉球が柔らかくなっているため、外での運動時に剥がれやすくなっています。
また、体重の増加も肉球への負担を増やす原因となります。
3. 肉球の乾燥やひび割れ
室内暖房や冷房の使用により、空気が乾燥すると肉球も乾燥しやすくなります。
乾燥した肉球は弾力性が低下し、ひび割れや亀裂が入りやすい状態になります。
また、加齢とともに肉球の再生力も低下するため、高齢犬は特に注意が必要です。
乾燥による肉球のひび割れは、放置すると徐々に悪化し、最終的に剥がれてしまう可能性があります。
4. アレルギーや皮膚疾患
食物アレルギーや接触性アレルギーにより、肉球に炎症が起きることがあります。
アレルギー反応により肉球が赤く腫れたり、かゆみで舐めすぎたりすることで、二次的に剥がれてしまうケースも見られます。
また、自己免疫疾患や皮膚炎などの皮膚トラブルも、肉球の健康状態に影響を与えます。
これらの疾患により、肉球の皮膚が脆弱化し、通常の生活でも剥がれやすくなってしまいます。
5. 怪我や外的要因
散歩中のガラスや尖った石での切傷、室内でのカーペットやフローリングとの摩擦など、様々な外的要因で肉球が傷つくことがあります。
特に、都市部では路上の危険物に注意が必要です。
犬の肉球が剥がれたときの症状と重症度の見極め方
肉球が剥がれた場合、その程度によって対処法が異なってきます。症状を正しく見極めることで、適切な治療法を選択できます。
軽度(表面の皮が剥がれただけ)
・症状:うっすらとピンク色になっている程度
・痛みの様子:あまり気にしない
・歩き方:普段通り
・出血:なし、もしくはごく少量
この程度であれば、家庭での処置で対応可能です。ただし、清潔に保ち、悪化させないように注意が必要です。
中度(皮膚がめくれ、軽い出血あり)
・症状:肉球の内側の層が見える
・痛みの様子:時々舐める、気にする様子
・歩き方:少しびっこを引く
・出血:にじむ程度
この段階では、家庭での応急処置と共に、状況に応じて動物病院への受診を検討する必要があります。
重度(深く剥がれ、出血・化膿あり)
・症状:肉球が真っ赤で、深いところまで剥がれている
・痛みの様子:頻繁に舐める、触られるのを嫌がる
・歩き方:明らかに痛がり、患部を浮かせて歩く
・出血:明確な出血がある
この状態は要注意です。感染症のリスクが高く、適切な治療が必要なため、速やかに動物病院を受診しましょう。
こんな症状が出たらすぐ病院へ!
以下の症状が見られる場合は、早急に獣医師の診察を受けることをお勧めします。
・傷口から膿が出ている
・患部が熱を持ち、腫れている
・歩くたびに痛がる、鳴く
・1週間以上経っても改善が見られない
・食欲や元気が減退している
犬の肉球が剥がれたときの応急処置
1. まずは肉球を清潔にする
応急処置の第一歩は、傷口を清潔に保つことです。以下の手順で行いましょう。
- ぬるま湯(体温程度)で優しく洗い流す
- 清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取る
- 犬用の消毒液で消毒(人用の消毒液は刺激が強いため使用しない)
注意点
・強くこすらない
・熱すぎる/冷たすぎる水は使わない
・市販の消毒液を使用する場合は必ず犬用を選ぶ
2. 傷の保護方法
清潔にした後は、傷口の保護が重要です。
【推奨する保護方法】
・犬用の肉球保護パッド
・清潔なガーゼと包帯
・獣医師推奨の保護クリーム
【避けるべき保護方法】
・人用の絆創膏(剥がす際に肉球を傷つける)
・テープ類(粘着力が強すぎる)
・きつすぎる包帯(血行不良の原因に)
3. 痛みを和らげる方法
獣医師に相談の上、以下の方法で痛みの緩和を図ります。
・処方された動物用消炎鎮痛剤の使用
・安静にして患部への負担を減らす
・クールマットなどで患部を冷やす(熱感がある場合)
動物病院での治療方法とは?
病院での治療は、症状の程度によって大きく異なります。ここでは、症状別の一般的な治療方法をご紹介します。
1. 軽傷の場合の処置
軽度の場合、通常は以下のような治療が行われます。
・専用の消毒液による洗浄
・抗生物質入りの軟膏塗布
・肉球保護パッドの装着
・必要に応じて内服薬の処方
治療期間は約1週間程度ですが、傷の状態や犬の年齢によって異なります。この間は散歩を控えめにし、患部を清潔に保つことが重要です。
2. 重度の場合の治療
重症化している場合は、より本格的な治療が必要となります。
・局所麻酔による痛みの緩和
・深い傷の場合は縫合処置
・抗生物質の注射または内服
・必要に応じて点滴治療
・定期的な経過観察
重度の場合、完治までに2週間以上かかることも珍しくありません。獣医師の指示に従い、焦らず治療を続けることが大切です。
肉球が剥がれるのを防ぐための予防策
1. 適切な肉球ケア(保湿・クリーム)
日々のケアで肉球の健康を維持することが重要です。
【日常的なケア方法】
・就寝前に専用クリームで保湿
・優しくマッサージして血行を促進
・週1回程度のチェックで異常を早期発見
・入浴後は完全に乾かす
【おすすめの保湿ケア用品】
・天然成分配合の肉球クリーム
・ミツロウベースのバーム
・オーガニックシアバター
2. 散歩時の注意点
季節や時間帯に応じた適切な散歩管理が必要です。
【夏場の注意点】
・朝夕の涼しい時間帯に散歩
・アスファルトの温度チェック(手のひらで5秒以上触れていられる程度が目安)
・日陰のある道を選ぶ
【冬場の注意点】
・防寒・保温対策(肉球保護パッドの使用)
・除雪剤が撒かれた道路を避ける
・散歩後の肉球の水分をしっかり拭き取る
3. 適切な爪切りと足裏の毛のカット
爪や足裏の毛の管理も、肉球の健康に直結します。
【爪のケア】
・定期的な爪切り(月1-2回が目安)
・適切な長さの維持(地面につかない程度)
・爪切り時の出血に注意
【足裏の毛】
・毛が長すぎると肉球に負担
・定期的なトリミング
・プロのトリマーに相談
4. 肉球を守る犬用靴や靴下の活用
愛犬に合った適切な靴や靴下を選ぶことで、肉球を守ることができます。
【靴の選び方のポイント】
・サイズが合っているか(小さすぎず、大きすぎない)
・通気性があるか
・滑り止めがついているか
・装着が簡単か
【靴に慣れさせる手順】
- まずは室内で短時間から
- おやつなどで positive な経験と結びつける
- 徐々に装着時間を延ばす
- 外での使用に移行
犬の肉球ケアにおすすめの商品
1. 肉球ケアクリーム・バーム
【選ぶポイント】
・天然成分が中心
・防腐剤不使用
・べたつきが少ない
・塗りやすい形状
【特におすすめな成分】
・シアバター(保湿効果)
・ホホバオイル(バリア機能)
・ビタミンE(皮膚の再生)
・アロエベラ(消炎効果)
2. 犬用靴・靴下
【用途別おすすめ】
室内用:
・軽量で通気性の良い素材
・滑り止め付き
・装着しやすいマジックテープ式
屋外用:
・耐久性の高い防水素材
・確実なフィット感
・反射材付き(夜間の安全対策)
3. 傷を保護するための専用パッド
【選ぶポイント】
・通気性がある
・粘着力が適度
・サイズが適切
・交換が簡単
ここまでお読みいただきありがとうございました。最後に、これまでの内容の重要ポイントをまとめてご紹介します。
まとめ|犬の肉球を守るためにできること
愛犬の肉球の健康は、快適な生活を送るための重要な要素です。
この記事で紹介した予防策と対処法を参考に、愛犬の肉球ケアに取り組んでいただければ幸いです。
不安な点がある場合は、かかりつけの獣医師に相談することをお勧めします。