犬が人を噛んだ時の届出は必須?殺処分のリスクと正しい対応

愛犬が人を噛んでしまった—。そんな予期せぬ事態に直面し、とるべき対応に悩む飼い主は少なくありません。

特に「届出」については、「軽い怪我だから様子を見よう」「殺処分になるのでは」という不安から、踏み切れない方も多いのが現状です。

しかし、届出を怠ることで、後々大きなトラブルに発展するケースも。

本記事では、犬が人を噛んだ際の届出義務や殺処分に関する正しい知識、そして飼い主がとるべき適切な対応について、詳しく解説していきます。

犬が人を噛んだ場合の法律上の届出義務(狂犬病予防法と各自治体の規定)

狂犬病予防法では、犬が人を噛んだ場合、飼い主には48時間以内に保健所への届出が義務付けられています

これは咬傷の程度に関係なく必要とされる手続きです。

具体的な届出義務の内容

  • 発生日時と場所
  • 被害者の氏名・住所
  • 犬の特徴(品種、体格、毛色など)
  • 咬傷の状況と程度
  • 飼い主の連絡先

加えて、各自治体では独自の条例で追加の規定を設けているケースも。

例えば東京都では、動物の健康及び安全の確保に関する条例により、より詳細な報告が求められます。

「軽い傷でも届出が必要?」という疑問への回答

「軽い引っかき傷程度なら届出は不要では?」という声をよく耳にします。しかし、法律上は傷の軽重に関わらず届出が必要です。

その理由として、

  1. 狂犬病予防の観点
  2. 被害の正確な把握
  3. 再発防止のための指導機会の確保

が挙げられます。

届出をしないと起こり得る法的リスク

届出を怠ると、単なる行政手続きの不履行に留まらず、様々なリスクが発生する可能性があります。

行政からの指導や罰則

狂犬病予防法違反として

  • 最高5万円の罰金
  • 犬の一時保護命令
  • 飼育禁止処分

などの行政処分を受ける可能性があります。

民事責任(損害賠償請求・示談交渉)

届出を怠ったことで、後に被害者との関係が悪化するケースが少なくありません。

具体的なリスクとして、

  • 示談交渉が難航する可能性
  • 損害賠償額が高額化
  • 慰謝料請求の根拠として使われる
  • 「隠蔽を試みた」という印象を与える

などが挙げられます。実際の判例では、届出義務を怠ったことにより、飼い主の過失を認定する際の要因となったケースもあります。

刑事責任(過失傷害罪・重過失傷害罪)

深刻な場合、刑事責任を問われる可能性もあります。

  • 過失傷害罪:5年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
  • 重過失傷害罪:30万円以下の罰金

特に、届出を怠ったことで適切な措置が遅れ、被害が拡大したような場合には、より重い責任を問われる可能性があります。

届出をしないと殺処分になる?犬と飼い主が直面するリスク

多くの飼い主が届出を躊躇する大きな理由の一つが「殺処分になるのでは?」という不安です。

ここでは、実際の殺処分の基準や、飼い主ができる対策について詳しく見ていきましょう。

犬が人を噛んだ場合の「殺処分」の実態

結論から言えば、「1回の咬傷事故で即座に殺処分」というケースは極めて稀です。

保健所や動物管理センターでは、以下のような総合的な判断基準に基づいて対応を決定します。

  1. 咬傷の程度と頻度
  2. 犬の攻撃性の評価
  3. 飼い主の管理能力
  4. 再発防止策の実現可能性

殺処分になるケースとならないケースの具体例

殺処分検討の対象となるケース

  • 重大な怪我を負わせる咬傷を繰り返している
  • 飼い主による適切な管理が期待できない
  • 専門家による行動修正が困難と判断される
  • 人命に関わる危険性が高いと判断される

殺処分を回避できるケース

  • 初めての軽度な咬傷事故
  • 飼い主が適切な再発防止策を講じている
  • 専門家の指導のもと改善が見込める
  • 明確な原因があり、その除去が可能

「攻撃性の高い犬」と判断される基準

保健所や動物管理センターでは、以下のような要素を考慮して攻撃性を評価します。

  • 過去の咬傷歴
  • 警告なしの突発的な攻撃
  • 攻撃の強さと執着性
  • 人や他の動物に対する反応
  • 飼い主の指示への従順さ

飼い主ができること – 犬の更生とトレーニング

咬傷事故を起こしてしまった場合でも、飼い主の適切な対応により、多くのケースで改善が可能です。

専門家の指導を受けるメリット

獣医師やドッグトレーナーによる専門的な指導には、以下のようなメリットがあります。

  1. 科学的な行動分析に基づく改善プログラム
  2. 犬の心理状態の正確な評価
  3. 飼い主のハンドリング技術の向上
  4. 具体的な環境改善アドバイス
  5. 進捗の客観的な評価

専門家に相談することで、より効果的な改善策を見出せる可能性が高まります。

飼い主が守るべきマナーと安全管理

事故防止には、飼い主の適切な管理が不可欠です。以下のポイントを意識して日々の管理を行いましょう。

外出時の適切なリードの使い方

散歩時の安全管理は特に重要です。

  • リードは必ず法令で定められた長さを守る
  • 犬の体格や性格に合った適切な強度のリードを選択
  • 人通りの多い場所では短めに持つ
  • 他の犬や人との適切な距離を保つ
  • 突発的な事態に備えた持ち方の習得

来客時や子どもとの接し方に注意するポイント

特に注意が必要な状況での管理方法

来客時の対応

  • 必要に応じて別室での管理
  • 段階的な慣らし方の実施
  • 警戒心を和らげるための環境作り

子どもとの接し方

  • 直接的な接触の制限
  • 大人の監視下での交流
  • 子どもへの適切な接し方の指導

「万が一」に備えたペット保険の活用方法

適切な保険加入も重要な予防策の一つです。

  • 賠償責任補償の確認
  • 示談交渉サービスの有無
  • 補償額の適切な設定
  • 特約の確認(咬傷事故特約など)

まとめ – 犬が人を噛んだ場合は正しい対応が重要!

ここまで、犬の咬傷事故に関する重要なポイントを見てきました。

特に強調したいのは、届出は決して「処罰」のためではなく、適切な支援や指導を受けるための重要なステップだということです。

愛犬と地域社会の安全な共生のために、正しい知識と適切な対応を心がけましょう。

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※本記事は獣医師および動物行動学の専門家の監修のもと作成しています。個別の事例については、必ず専門家にご相談ください。

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