
「愛犬が散歩中に急に足を上げて、びっこを引いている…」こんな時、飼い主さんは慌ててしまいますよね。
見てみると肉球から出血していたり、何かが刺さっていたり。もしかしたらアスファルトの熱さで火傷しているのかも…と不安でいっぱいになるでしょう。
そんな時、止血のために家にあるワセリンを塗ろうとする飼い主さんもいるかもしれません。
でもちょっと待ってください!犬の肉球の怪我にワセリンは本当に適切な処置なのでしょうか?
この記事では、犬の肉球の怪我について、ワセリンの是非や正しい処置、予防法まで、獣医師監修の情報に基づいて詳しく解説します。
あなたの愛犬の肉球を守るための知識を、ぜひ身につけてください。
犬の肉球の怪我、よくある種類と症状

犬の肉球の怪我には、切り傷、擦り傷、刺し傷、火傷、ひび割れ、炎症など様々な種類があります。それぞれ症状も異なり、軽度のものから重度のものまで様々です。
- 切り傷・擦り傷
出血を伴うことが多く、ガラス片や金属片などが刺さっている場合もあります。
- 刺し傷
木の枝や針金などが刺さっている場合、見た目以上に深く刺さっている可能性があり、注意が必要です。
- 火傷
アスファルトや高温の金属などに触れて火傷する場合があります。赤く腫れ上がり、水ぶくれができることもあります。
- ひび割れ
乾燥によって肉球がひび割れ、出血することもあります。特に冬場に多く見られます。
- 炎症(趾間炎など)
アレルギーや細菌感染などによって肉球が炎症を起こし、赤く腫れ上がったり、痒みを伴ったりします。肉球の間が赤く腫れ上がる趾間炎は、細菌や真菌、アレルギーなどが原因で起こり、強い痒みや痛みを伴います。
例えば、私の友人の愛犬は、散歩中にガラス片を踏んでしまい、肉球を深く切ってしまったことがありました。
出血がひどく、すぐに動物病院へ連れて行ったところ、縫合手術が必要な状態でした。
また、別の友人の愛犬は、夏場のアスファルトで肉球を火傷してしまい、歩けなくなってしまったというケースも。
このように、肉球の怪我は軽視できないということを、身をもって体験しました。
肉球を怪我した時の正しい応急処置

愛犬が肉球を怪我した場合、まずは落ち着いて以下の応急処置を行いましょう。
- 患部を清潔にする
水道水で優しく洗い流し、汚れや異物を取り除きます。消毒薬は刺激が強いため、使用は控えましょう。出血している場合は、清潔なガーゼやタオルで圧迫止血します。 - 患部を保護する: 清潔なガーゼや包帯で患部を覆い、舐めたり、噛んだりしないようにします。市販の犬用靴下や靴を利用するのも良いでしょう。
- 動物病院へ連絡: 応急処置後、速やかに動物病院へ連絡し、受診の指示を仰ぎましょう。軽度の怪我に見えても、内部で炎症を起こしていたり、異物が残っていたりする可能性があります。
ここで重要なのは、自己判断で治療しようとしないことです。市販薬を塗ったり、民間療法を試したりするのは避け、必ず獣医師の指示に従いましょう。
犬の止血にワセリンは効果なし?
「ワセリンを傷口に塗ると止血になる」というのは、実は大きな誤解です。
SNSやネット上で時々見かけるこの情報、実は愛犬の回復を遅らせる可能性すらあるのです。では、なぜワセリンは止血に適さないのでしょうか?
ワセリンの本来の効果は、肌の保湿やバリア機能の強化です。確かに傷口を保護する効果はありますが、それは「すでに止血が完了した後」の話。
出血している状態でワセリンを使用すると、以下のようなリスクがあります。
- 血液の凝固を妨げる可能性がある
- 傷口の観察が困難になる
- 医療処置の妨げになる可能性がある
- 傷口に細菌が繁殖するリスクが高まる
特に犬の場合は、舐めることで傷口が悪化する可能性も高くなります。ワセリンの代わりに、獣医師が推奨する正しい止血方法を知っておくことが、愛犬のためには重要なのです。
獣医師推奨!安全確実な止血方法と必携アイテム
では、実際に獣医師が推奨する止血方法と、家庭で用意しておくべきアイテムについて詳しく見ていきましょう。緊急時に慌てないためにも、これらの情報は必ず押さえておきたいポイントです。
まず、家庭での応急処置キットに入れておきたい必需品をご紹介します:
- 滅菌ガーゼ(複数サイズ)
- 清潔なタオル
- 動物用止血パウダー
- 伸縮包帯
- ペット用抗菌スプレー
- はさみ(包帯カット用)
特に動物用止血パウダーは、獣医療現場でも使用される効果的なアイテムです。人用の市販止血剤は犬への使用が適していない場合があるので、必ず動物用を選びましょう。
実際の使用方法は以下の手順で行います:
- 傷口を清潔なガーゼで軽く拭く
- 止血パウダーを適量振りかける
- 清潔なガーゼで5-10分程度圧迫する
- 必要に応じて包帯を巻く
特に散歩中の事故が心配な場合は、コンパクトな応急処置キットを用意して持ち歩くことをおすすめします。また、かかりつけの動物病院の連絡先も必ず登録しておきましょう。
止血に関する誤解や間違った処置は、愛犬の回復を遅らせる原因になります。正しい知識を身につけ、いざという時に適切な対応ができるよう、準備しておくことが大切です。
犬の肉球の怪我にワセリンは効果的?獣医師の見解

結論から言うと、犬の肉球の怪我にワセリンを使用することは、獣医師は一般的に推奨していません。
ワセリンは油分でできており、傷口を覆って保湿効果はありますが、同時に通気性を悪くし、細菌の繁殖を助長する可能性があります。
また、犬がワセリンを舐めてしまうと、消化器系のトラブルを引き起こす可能性も懸念されます。
獣医師の中には、薬を塗布した後の乾燥防止としてワセリンを使用する場合もありますが、あくまで獣医師の指示のもとでの使用に限られます。
自己判断でワセリンを塗布することは避け、適切な治療を受けるようにしましょう。
最近では、犬専用の肉球クリームやバームが市販されています。
これらの製品は、犬の皮膚に優しく、保湿効果も高いため、ワセリンの代わりに使用することができます。
しかし、製品によって成分や効果が異なるため、購入前に獣医師に相談することをおすすめします。
動物病院は何科を受診すべき?費用は?
犬の肉球の怪我は、動物病院の「皮膚科」または「外科」を受診しましょう。多くの動物病院では、一般診療の枠組みで肉球の怪我も診てもらえます。
まずは電話で症状を伝え、適切な診療科を案内してもらいましょう。
治療費は、怪我の程度や治療内容によって異なります。
簡単な処置であれば数千円程度で済むこともありますが、手術が必要な場合は数万円かかることもあります。
また、再診料や薬代なども別途必要になります。 事前に費用について確認しておくと安心です。
家庭での肉球ケアと予防策
愛犬の肉球の怪我を予防するためには、日頃からのケアが重要です。
- 定期的な肉球チェック
散歩後やシャンプー後は、肉球に傷や異物がないか、乾燥していないかなどをチェックしましょう。
- 散歩コースの確認
散歩コースにガラス片や金属片などが落ちていないか、定期的に確認しましょう。夏場はアスファルトの温度にも注意が必要です。
- 肉球の保湿
乾燥しやすい肉球は、犬専用の肉球クリームやバームで保湿ケアを行いましょう。
- 犬用靴の活用
怪我しやすい犬や、足裏がデリケートな犬は、散歩時に犬用靴を履かせることで、怪我のリスクを軽減できます。
これらのケアを続けることで、愛犬の肉球を健康な状態に保ち、怪我のリスクを最小限に抑えることができます。
まとめ
愛犬の肉球の怪我は、飼い主さんにとって心配な出来事ですが、正しい知識と適切な処置によって、多くの場合改善することができます。
ワセリンの使用は獣医師の指示に従い、自己判断での使用は避けましょう。
日頃から肉球のケアを心掛け、異変に気づいたらすぐに動物病院へ相談することが大切です。
この記事が、愛犬の肉球の健康を守るためのお役に立てれば幸いです。